夢とその間を行ったり来たりしたのは久しぶりだった
最近ずっと現実を追うのに必死だった
夜行バスに乗るのも慣れてしまった
今年まだ虹を見ていないわたしは
夢の中で、誰よりもいちばんに虹を見つけた
夢がかなった気分だった
台風一過の朝。
何ヶ月ぶりかに1人で迎えた朝
ぼんやり、夢とその間で、快晴の空を横から眺めた
動くと体のあちこちが痛い。
疲労と、寝不足、軽い風邪のせいだろうか、
昨晩は眠れなかった。
このボロ家が今にも吹き飛んでしまうんではないか
と思うくらいのゴーゴーの台風と
ずっと顔面10cmの距離で
ニャーニャー訴えてくるニーチェ(猫)と
体の不調とで
モウロウとしていた。
「おなかすいたの?さっき食べたよね」
「ニャー!ニャー!」
「外に出たいの?雨だよ、ぬれちゃうから出れないよ」
「ニャー!ニャー!!」
「・・・もう、知らないよ。嵐なんだからね!」
投げやりに、手をのばして窓を開けてみた。
すると、生暖かい風がぶわああああっと舞い込んできて
雨の音や風の音が、目の前で鳴り始めた。
草や木や山が踊り、それが激しくも、ゆるやかにもなった。
窓際に集まった猫三匹とわたし一人は、しばらく
その台風のショーに見入ってしまった。
私はいつのまにか眠っていて
二匹もおなかの上に乗って寝ていた
でも、ニーチェだけはずっと窓際に座り、
朝方、台風が去るまで、そのショーをずっと見ていた
きっと、眺めていた のではなく、あれは、見ていた
何を見ていたんだろう。
ニーチェ。
哲学猫。
朝、その夜のことがウソみたいに
同じ窓から、快晴の空を横から眺めていた
猫たちはすっかり遊びにいったらしい。
いいなぁ
草がキラキラしていて
空気も気分もスッキリしていて
久しぶりの太陽をみんなで浴びて
いいなぁ
こんな朝に野山を駆け巡れたら
楽しいだろうなぁ
体はあちこち痛かったが、心は私も晴れやかで
幸いなことに、昨夜の喉の痛みは消えていた。
紅茶色になるまで煮詰めた生姜湯を
寝る前に熱々で飲んだのが効いたらしい。
虹を見つけたんだ
ぼんやり、夢とその間に漂い
久しぶりに一人になった空気を楽しんだ。
今頃は、高知にいるはずだった。
台風真っ只中の高知へ行ったら
それはそれで楽しかったかもしれない。
健康が第一にあって、
日々が在ることを思い知らされる。
神様が「行くな、今は行くな、」と言ってるようにしか思えない。
前夜、居酒屋で受け取った電話で
お世話になる高知の人が、感染性の可能性がある病だとわかった。
台風もどんぴしゃだった。
後から確認すると
予約したバスは動いたが、電車は走るのを止めていた。
京都で慌てて直前に購入した新宿行きの夜行バス。
0時発の、最終便。
そのバスの車中では
「明日は絶対美味しいものを食べるんだ」の一心で、一睡もできず
2日間開かずのままだったキャリーケースとギターケースを持ち
台風の朝、自力でなんとか帰宅すると、
死に物狂いの身体ですぐに、甘酒と塩麹とハンバーグを仕込んだ。
「若いっていいねぇ。」
何気なく放たれたその言葉に、私の気持ちはどこへ行ったらいいの?
おしえて
るーるるーーー
つづきは、また
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